レッド・ツェッペリン『聖なる館』全曲レビュー

こんにちは。
ツェッペリンのアルバムの中でも「変わった作品」である、『聖なる館』についてレビューしてみます。

私のなかではツェッペリンの最高傑作は『Ⅳ』。
まあ一般的な評価も、おおむねそうでしょう。

巨大なスケールの名曲「天国への階段」は言うまでもなく、破壊力抜群の「ブラック・ドッグ」「ロックン・ロール」、神秘的な「限りなき戦い」、首根っこ掴むような強引な脱力感の「ミスティ・マウンテン・ホップ」、あくまでブルースなのは間違いないが、いろんなものをゴッタ煮にして終始強火で煮詰めた結果、もはや何が何だか分からないが凄まじいエネルギーを持ったマグマのような音の濁流「レヴィー・ブレイクス」。

ここまでの作品を作り上げてしまったツェッペリン。次はいったい何をやる気なのか? 何かやることは残っているのか?

リアルタイムで追っていたファンも同じ様に感じていたんでしょうかね?

事実、難産ではあったのか、
『Ⅰ』『Ⅱ』の発売が1969年、
『Ⅲ』が1970年、
『Ⅳ』が1971年というペースで来ていますが、
『聖なる館』はそこから1年空いて1973年の発売となりました。

しかしその割には、本作に入り切らずに『フィジカル・グラフィティ』や『コーダ』に回されたアウトテイクも多く、少なくとも数の上では割と豊作ではあったみたいです。

全曲レビュー

1.The Song Remains The Same

ニワトリみたいな曲。

『Ⅱ』の1曲目は「胸いっぱいの愛を」
『Ⅲ』は「移民の歌」
『Ⅳ』は「ブラック・ドッグ」でした。

彼らのパターンとして、1曲目はとりあえずとびきりハードなやつを持ってきて、徐々にアコースティック的なのを交えた趣味に走る、というのがここまでの常套手段でした。

では今回もそのパターンを踏襲しているのかと言うと、そこがどうもよく分からない。

この「永遠の詩」、ハードかつ非常にさわやかな曲です。

いや、良いことなんですけど、ファンの期待に答えるべくハードなのをやっているつもりなのか、それとも外しに来ているのか、いまいち判断がつきません。

ツェッペリンがやるハードなのと言えば、例えば「ハートブレイカー」とか「ブラック・ドッグ」みたいな図太くて強引なやつです。そういうラフなのを、サッとやる感じが定番でもあったのですが、、、

この「永遠の詩」と来たら、テンポは速くリズムはタイトなのですが、同時に「ランブル・オン」や「限りなき戦い」が持っていたフォーキーな雰囲気も併せ持っています。そこにもってきて緩急に富んだ曲展開、妙に青春っぽい歌詞、どこを切ってもマンネリが無く、繊細に計算されたアレンジと、味わうべきポイントが実に豊富。だいいち曲が長い。いきなり5分半。

従来のツェッペリンのアルバムには、「幻惑されて」とか「天国への階段」のような、持っているアイデアを全部ブチ込んだ大作みたいな曲が存在しましたが、本作『聖なる館』においてはこの「永遠の詩」がそのポジションであると言って良いと思います。

そういう曲を1曲目に持ってきておいて、よく聴いてみると後に続く曲たちもすべからく、ハードロックであると同時にフォークロックであるような、この独特の手触りを継承した曲ばかり。

「永遠の詩」を境にツェッペリンの音作りは明らかに変わっているのです。

そういう意味ではこの「永遠の詩」、『Ⅳ』以降のオレたちはこういう路線で行くんだゼという決意表明のような重要なポジションになる訳ですが、そこで妙に力んだりせずに、朝日のようにさわやかなこの曲を持ってくるあたり、実に粋ですね。

そういった背景まで考えて味わってみると、地味にスゲエ曲だと思うんですが、でもやっぱりニワトリみたいな曲だとも思う。

2.The Rain Song

名曲。

最新のベストアルバムである『マザーシップ』には何故収録しなかったんでしょう? 不思議でしょうがないです。

雨だれの粒のように切ないギターの音色、凍えるようにセンチメンタルなメロディ、暗闇に灯る小さな炎のように、ゆらゆらと儚くも美しい導入部からメロトロンの素朴で温かい音色で洪水のようにたたみ掛けるシンフォニックな怒涛の展開。

四季の移ろい、人の感情の起伏、自然と動物たちの営み、凍える冬から、新たな季節の訪れを告げる「雨」、木々を育て、緑を育む「雨」

壮大な情景を「雨」に託して描いたこの曲、ツェッペリンが作っちゃったから他の数多の名曲に隠れて「普通の曲」扱いされているものの、
他のバンドがやったら、キャリアの中で最高傑作と言われてもおかしくないとんでもない名曲だと思います。

3.Over The Hills And Far Away

このアルバムからのシングルカットはこの「丘の向こうに」と「ノー・クォーター」だったらしい。
個人的にはこのチョイス、よく分かりません。

「レイン・ソング」の余韻を壊さないように静かに始まるところは褒めてやってもいいけど、盛り上がりが唐突じゃない? ビックリします。

4.The Crunge

変なリズムの曲。それだけ。

しかしこんな曲でもボンゾのドラムは気持ちいいですね。
なんかボンゾはこの曲を気に入っててライブでも演りたがるんだけど、ペイジはやりたがらなかったらしいです。

「クランジ」「ダンシング・デイズ」「ジャ・マイカ」が私の中でヘンテコ3兄弟みたいなイメージなんですが、「クランジ」がいちばん単純にヘンテコで楽しくて好きです。

5.Dancing Days

ちゃ〜ら、ら〜らららっ♪
ちゃ〜ら、ら〜らららっ♪
ちゃ〜ら、ら〜ららららっ?
ちゃ〜ら、ら〜らららっ♪

へんてこ〜なリフ。

プラントは喉を痛めて、ハイトーンボイスが出なくなりつつあった頃だけど、それにしてもこんないい加減な歌い方あるか? ってくらいに脱力したボーカル。

夕焼けの時間帯に、母ちゃんが台所で踊ってるみたいな曲。

6.D’yer Mak’er

なんでいきなりレゲエなの!?
というツッコミは彼ら自身も狙ってやっていたんでしょうが、完全にギャグなのかと言われるとそうでもなく、普通に哀愁があって起承転結が効いていて、情感豊かないい曲。そこがまたオカシイ。

7.No Quarter

洞窟の底のように暗ーくて青白ーい曲。

この曲って人気あるのかな?
シングルカットされたしライブでもよく演奏されるし、ベストアルバムにも必ず入る。

個人的には地味な割に長くて、若干退屈な気がするんですけどね。

いや、ちゃんと聴いてみると確かに雰囲気があるし格好いいんだけど、なんと言うかゲームで言ったら「洞窟のBGM」だよね。

8.The Ocean

長い洞窟を抜けてみればそこは崖の上、広がるのはいちめんの空と海。
そんな開放感あふれる、パワフルな曲。

強引で自分勝手なギターリフに、ズンパ、ズンパという独特なドラム、必要以上のシャウト。これぞZEPといった感じの曲ですがそれでいて終始リラックスしたテンションなのは意外と新しいかも。

全体的に何が言いたいのかいまいち分からない曲ではあるんですが、リスナー置いてけぼりのまま自分らで勝手に愉快になって「うふー♪ うふー♪」「so good(о´∀`о)」とか言って終わっちゃう、その殿様商売みたいな感じがじつにイイですね。痺れます。

まとめ

というわけで『聖なる館』の全曲レビューでした。

改めて聴き直してみても「傑作」と呼べるような隙の無いシロモノではありませんが、ヘンテコで楽しいアルバムですよね。

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