福本伸行漫画の最高傑作は『天 天和通りの快男児』である理由

こんにちは。

みなさん、『天 天和通りの快男児』という漫画をご存知ですか?
『カイジ』『アカギ』なんかで有名な福本伸行先生が、長期連載していた麻雀勝負漫画です。

私はこの作品が大好きで、それこそ人生を左右されるくらいの影響を受けてしまっているのですが、世間的な知名度は今ひとつ・・・?

ということで、この記事では『天』の魅力について、ご紹介いたします。

あらすじ

1〜3巻 天和通り編

天和通りの雀荘で小遣い稼ぎをしていた浪人生の井川ひろゆきは、助っ人として現れた天貴史と出会い、共に行動するようになります。

そこで敵として現れるのが、作中最強の打ち手である赤木しげる。

変幻自在・異端の打ち筋の赤木に、天が立ち向かいます。

3〜15巻 東西戦編

大学生となったひろゆき。強敵を求めて訪れた大阪で異端の打ち手・健と出会います。

そこで健から勧誘されたのが「東西戦」。

東日本・西日本それぞれを代表する打ち手が集まり、代打ち業界の利権を争って麻雀勝負をするというもの。

西軍は、関西有数の暴力団の組長である原田克美を筆頭に、赤木登場以前の裏社会で絶対的な覇権を持っていた男・僧我、天専用の刺客・尾神といったメンバー。

対する東軍は、短期間に裏社会のトップクラスに登りつめた天をリーダーとし、赤木、ひろゆき、ガン牌の達人・銀次ほか。

彼らがそれぞれ特徴的な打ち方で、戦いを繰り広げます。

16〜18巻 通夜編

東西戦が終わって9年後、天や赤木の麻雀には生涯及ばないと直感したひろゆきは、サラリーマンとして生きながらも、どうしようもない閉塞感を抱いていました。

そんなある日、飛び込んできたのが赤木しげるの「通夜」の案内。

通夜に参加したひろゆきを待っていたのは、しかし、まだ生きている赤木と、天、銀次、原田、僧我といった、東西戦に参加した面々でした。

聞けば赤木はアルツハイマーを患っていて、自分らしさを失う前に、今夜命を絶つことにした、それに先立ち、懐かしい面々と一言二言、言葉を交わし、別れを告げたいとのこと。

めいめいが一人ずつ、赤木と面談をすることに。
自殺を止めようとする者もいれば、最期の勝負を持ちかける者も。

『天』の魅力

「敵視点」が面白い

よく考えてみると漫画として滅茶苦茶なようですが、最強キャラである赤木が、自軍に居ます。

ルフィの手下にエネルや白ひげがいるようなもの。吉良吉影を倒すのをDIOやカーズが手伝ってくれるようなもの。

キン肉マンで例えれば

東軍
赤木:悪魔将軍
天:キン肉マン
ひろゆき:ブロッケンJr

西軍
原田:スーパーフェニックス
僧我:ネプチューンマン

くらいのパワーバランスで、なんか最初から味方の方が強めです。

じつはこれが『天」では、かなりうまく作用しています。

東西戦では一局ごとに、主観視点が切り替わります。

つまり始めはひろゆき視点で、自分を罠にハメようとする原田や僧我を前にして必死にその考えを読みながら戦ってゆく。

それが場面が変わると原田や僧我の視点になり、何を考えているのか訳が分からない赤木を相手に策を巡らし、汗を垂らしながら牌を切っていく。

敵側も必死で考え、戦っていることが分かり、読み手の緊張感もいっそう高まります。

三者三様の主人公が素敵

天貴史、井川ひろゆき、赤木しげる と、『天』には主役級のキャラクターが3人います。

この3人がそれぞれに濃く、味わい深いキャラをしています。

天貴史

福本漫画のなかでも、かなり正統派の主人公と言えるでしょう。

定職に就かず収入源が謎、なぜか嫁が2人いる、という怪しい面もあるにはありますが、

基本的には情に厚く、小細工を好まず、度胸があり、不利な局面でも決してあきらめない、という非常に前向きな性格を持った人物です。

また、独特の暑苦しいルックスもいい方向に作用しています。

東西戦最終局面の原田組長との一騎打ちなどは、本当に息が詰まりそうな絵面です。

井川ひろゆき

理詰めの麻雀が得意な若手。

強い打ち手と戦いたい、という気持ちが強く、けっこう向上心・野心のある人物です。

その一方で、天や赤木といった自分より実力が上の人物はしっかりと認めて目標にする、素直に指示を聞くといった謙虚な面もあります。

東西戦では実力不足からしばしば足を引っ張りますが、彼が理知と覚悟を持って格上に立ち向かう様が、この漫画の醍醐味でもあります。

通夜編では死んだ目をしたサラリーマンになっています。彼と赤木のやりとりも又、通夜編のハイライトです。

赤木しげる

作中最強の打ち手です。
常人の理解を超えたセンス、臨機応変で型にはまらない思考で、次々と相手の裏をかきます。
単純に上手いというだけじゃなくて、いちいち「その手があったか!」と思わせてくれるの読み手にとって魅力ですね。

『アカギ』で描かれている若い頃からは時間が経って、シブイおじさんになっています。

若い頃よりも口数が多く、マイペースでわがまま。
しかしどういう訳かひろゆきの事は気にかけてくれて、事あるごとにアドバイスをくれるという、面倒見のいい一面もあります。

勝負においても人生においても、勝ち負けよりも「自分らしく」あることを優先する価値観の持ち主で、この赤木の人生観に、シビれてしまう読者は多いのです。

読者が「当事者」になれるのがスゴい

主役級のキャラが3人いるとはいっても、実際に読者が自分を重ねることを想定されているキャラクターは、ひろゆきです。

このひろゆきですが、非常に無理のない設定のキャラクターで、特に通夜編のひろゆきなどは、ハマる人はバリバリに共感してしまいます。

考えてみてください。

福本漫画に、自分を重ねられる主人公は、まずいません。

桁外れの借金を背負って地下で強制労働してるカイジ。
中学時代からヤクザと麻雀勝負してるアカギ。
冤罪で孤島の刑務所に入れられる涯。
競馬で負けたと思ったら命を張った儲け話を持ちかけられる森田。

そんな人いますか?
いませんよね?

それに対してひろゆきです。

自分の本当にやりたいことを押し殺して、鬱々と過ごすサラリーマン。

いるでしょ? メチャクチャいるでしょ。日本国内に3,000万人くらいはいそうです。

そして、そんなひろゆきに対して通夜編で赤木が語る言葉は、そのまま、読者に直接向けられた言葉です。

通夜編のメッセージが熱い

自分を押し殺して日々を生きているひろゆきに対し、赤木は「お前は半ば死んでいる」と言い放ちます。

「成功や失敗といった、結果にとらわれるな」
「生きるということは、ただ「動く」こと」
「人の目や、常識に縛られなくても良い」
「成功は、積みすぎると自分を縛る枷になる」
「三流でも、自分のやりたいことをやるのが大事」
と言う赤木。

私は読み返すたびにグサグサ胸に刺さって、ボロボロ泣いてしまいます。

ホントにこのへんのメッセージは目からウロコ、勇気をもらえて、胸の中が洗われたようにスッキリして、生きることにワクワクしてきます。

しかし、そんな赤木に対して「赤木さんには、へこたれる人間の気持ちが分からない・・・」と言い返すひろゆきもナカナカです。

私自身、サラリーマンで悩んでいた頃には、ひろゆきの考え方にも文句なく共感できましたからね。

この一言があるだけで、また違います。
このへんのせめぎ合いまでちゃんと描いてくれてるから、説教臭くならずに、リアルに心に響くんです。

麻雀を知らなくても大丈夫?

麻雀漫画だけに、ここは気になるところ。

私の感覚から言うと、捨て牌を読むとか、スジとか、そのへんは分からなくてもいいかなと。読みに関してはけっこう丁寧に解説が入るし、なんとなく雰囲気で伝わるところがあります。

ただ、役の高い低いくらいは知っておきたいですね。

「天、四暗刻テンパイ・・・!」

とか、高い役だと知ってるだけで緊張感も違いますから。

まとめ

以上、『天 天和通りの快男児』のご紹介でした。

『天』は、手に汗握る勝負だけでなく、人生を生きる勇気をくれる作品です。

まだ読んでない方はぜひ、読んでみてください。

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