オスカー・ピーターソン『プリーズ・リクエスト』

オスカー・ピーターソンをもっと布教したい。

いや、十分に大物ではあるんだけど、
これから何かジャズを聴こうかな、っていう人がちょっと調べてみて
はじめに出会う名前がマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンじゃなくて、
そこはオスカー・ピーターソンだろう、と思うわけです。

まあ、ジャズの歴史の中においてピーターソンの評価が大きくない理由は分かります。

それは、「何一つ新しいことをしていないから」

なんじゃそりゃ、と思われるかもしれないが、
この人は、ジャズの新たな可能性を追い求め、
新しいスタイルを模索し、ジャズの進化の方向性を示す、
ようなことは、まったくやっていません。

ずーーーっと、楽しくピアノを弾いていただけなのです。

ただし、圧倒的な技量と、膨大なエネルギーを持ち、
それを脇目もふらずに、「楽しくピアノを弾くこと」に投入した結果、
その「楽しさ」の度合いが、とんでもないことになってしまっているのです。

だから、ジャズ初心者の方は、まずはピーターソンのような
理屈抜きで楽しめるミュージシャンに出会うべきだと思う。

それで、ピーターソンの作品の中でも、おすすめなのがこれ。
「好きな曲リクエストしてよ! やるよ!」
っていう、なんとも軽快なコンセプトの作品です。

まずは出だしの「コルコバード」が、繊細でロマンチックに過ぎる。
ゴルゴダの丘で、身を寄せ合い、愛の言葉を語る二人。
海を見下ろすと、夕焼けはゆっくりと夜に変わり、街の灯がともる・・・

しっとりとスローテンポで演奏されることが多い曲だが、ここでは軽快なアレンジ。
なんだけれどもピーターソンのピアノは、
ささやき声のような、夜空の星の瞬きのような優しいタッチ。
くすぐり合って笑いあうような、そんな楽しいひと時を思わせる曲。

2曲目の「酒とバラの日々」
本来は酒で身を滅ぼす夫婦を歌った切ない曲で、
これもゆっくりと、哀愁たっぷりに演奏されることが多いものだが、
ピーターソンの「酒バラ」は、ひたすらに明るく、楽しい。
「今日も明日も、お気に入りのバーで一杯やって、ゴキゲン!」って曲にしか聴こえないぞ。

とまあ、終始こんな感じのアルバムなのだ。

ジャケットの写真を見てくださいよ。
3人が3人とも、実に嬉しそうにニコニコしちゃって。

嫌なことがあっても、問答無用で楽しい気分にさせてくれる、強力なアルバムです。
疲れて帰ってきた夜に、ウイスキーでも舐めながらどうぞ。

次に聴くべきは・・・

同じくとっつきやすいピアノトリオの名作だけど、もうちょっとしっとり目な
マッコイ・タイナー『バラードとブルースの夜』



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