江國香織『流しのしたの骨』

父、母、三姉妹とその弟の、6人家族の生活を穏やかに描いた
まったり系の小説。

私は江國さんの作品でこれをいちばん最初に読んでいたく気に入り、
他の作品にも手を伸ばしてみたのだが、
こういう雰囲気の作品はなかなか無かった。

燃えるようで苦しい恋や、思春期の悩みなんかで
主人公の心が揺れ動く、というのが全くない。

嫁に行った長女が出戻って来てしまったり、
次女が他人の赤ちゃんを引き取ると言いだしたり、
弟の学校に親が呼び出されたり、
それなりに事件はあるのだが、
語り手の三女「こと子」は、大きく動じることなく、
「心平らか」に、それを見つめている。

主人公のこと子は、よっぽど落ち着いた、
出来た人間なのかと思えばそうでもなく、
高校を卒業して働くでもなく、特に勉強がしたいわけでもないからという理由で
大学にも通わず、何もせずにのんびり暮らしている。

で、そんな19歳無職のこと子だからこその日常の見つめ方が、
この作品に、ふわりと優しくも、みずみずしく鮮やかな手触りをもたらしているのだ。

夜の散歩、雨の日の淋しさ、夕飯の支度にぎんなんを割る音・・・
学校や職場といったフィルターを通さずに、世界と直に触れる感触。

少し歩きましょう。少し歩いて、くたびれたら家に帰りましょう。

私の大好きなこと子のセリフ。

ボーイフレンドとのはじめてのデートで言ったセリフだ。

人はくたびれるものだから、くたびれることを最初から考慮に入れているのがいいし、
じゃあくたびれたらどうするのかと言うと、
お茶でも飲んでちょっと休んで・・・ なんて粘り方もせず
「家に帰る」

無理をしないで、あせらないで、いちばん自然なことをするこの感じ。

心の常備薬として常にそばに置いておいて、
いい天気の休日にたっぷりとしたカフェオレでも飲みながら読みたい。

次に読むべきは・・・

江國さんといえば『きらきらひかる』
だいぶシリアスでセンチメンタルな純愛モノだけども、
特有のふうわりとした手触りの文体がスンスンに冴えてる。
そしてやっぱり、ちょっと変。そこがいい。

あと夏になると読みたくなるのが『なつのひかり』
やどかりに案内されて、夢うつつの世界に迷い込む、
かなりシュールな作品。



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